最終更新日:2024.03.10
こちらは、WordPressの構築を行う制作会社に共通する悩ましいご依頼でしょうし、反対に制作を依頼する企業様にとっても悩ましい問題と思われます。
相談者様が新たな制作会社から聞いた「できることとできないことがあります」という回答は、制作会社からすれば、そうお伝えせざるを得ない部分となります。
結論からいえば、同じWordPressを使ったサイトでも、構築の仕方や機能実装方法は無数にあり、そのサイトの「改修」を引き継ぐ側としては、事実、改修できるところもあるし、手をつけられないところもあるということです。
例えになりますが、デザイン素材一式と更新機能などを明記した仕様書を、ふたつの制作会社に渡して開発をお願いしたら、一体どういうことが起こるのか……?
おそらくは、見かけも更新できる機能もまったく同じなのに、管理画面は違っていたり更新手順が違っていたりと、管理画面だけを見たらまったく違うサイトに思えるものができるはずです。
それくらい、制作会社ごとに実装方法が異なるのです。
とはいえ、ログイン情報をご共有いただき、対象のWordPressサイトを隈なくチェックさせていただければ、そのWordPressサイトの設計や実装状況を把握し、「できる改修」と「できない改修」、「できるかもしれないけどリスクが高いこと」などを、お伝えすることができると思います。
弊社では、自社開発ではないWordPressサイトの改修依頼があった場合は、対象のWordPressサイトを細かく調査させていただいたうえで、対応の可否を報告させていただくフローをとらさせていただいております。
当サイトでも、同様のご相談の場合は「3時間WordPress調査(有料)」という(時間で限定した)調査作業を事前に実施してから、対応可否をご回答しています(詳しくは「相談をする前に」をご覧ください)。
片手間ではなく、しっかりと「調査」を実施してからでないと、「改修」については責任を持って言及できないからです。
当社では、これまでにも、他社様開発のWordPressサイトも多数改修させていただいております。その経験を元に、以下にいくつかお役に立てる情報をご提供できたらと思います。
※改修事例については一部になりますが、詳しくは「解決事例一覧」もご覧ください。
Q:そもそも、制作会社ごと、どうして実装方法が異なるの?
いろいろ理由はありますが、これまでの経験からいえば、開発を担当したエンジニアのスキルに依るところが大きいと思います。
たとえば、コーポレートサイトで「事例」を更新する機能がご要望にあり、その機能を実装する場合、更新機能の組み立て方は多種多様です。
「事例」ひとつの構成要素となる「画像」や「紹介テキスト」、アーカイブ化してコンテンツとしてまとめる場合の「カテゴリわけ」や「関連事例の抽出リンク機能」「ページネーションの作り方」等、設計においては様々な要素があり、これらをどうまとめ上げるかは、エンジニアのスキルに依るところが大きくなります。
スキルの高いエンジニアなら、コンテンツの拡張性や更新作業の効率化をしっかり視野に入れて開発します。「事例」コンテンツの例でいえば、後々、事例のカテゴリが増える場合や紹介項目が増えることも想定しますし、更新できるとはいえ、入力手順が複雑だったりミスが起こりやすい手順だったりするなら、そのあたりまで考えて整理します(このあたりはディレクターが担う部分でもありますが)。
一方で、スキルがそこまで及ばないエンジニアの場合は、プラグインの機能に寄せるカタチで更新機能を組み立てたりします(拡張性や効率化はいったん棚に上げ、仕様を満たすことに注力)。
もちろん、それが悪いのではありません。予算や工期の兼ね合いでそうせざるおえない場合もありますし、弊社でもそのような実装方法を取る場合があります。
今回は、「実装方法」がテーマではないので話を進めますと、これらのことはウェブサイトを外から閲覧しているだけではわからず、WordPressサイトにログインして調べてみないとわからないのです。
調査前にご依頼主から「どう思いますか?」と聞かれれば、「できるかもしれないし、できないかもしれません」とお答えすることになると思います(もちろん調査前でもわかることはきちんとお伝えいたします)。
そして結果、サイトの中を見て、大半は問題ないのですが、対象WordPressサイトが拡張性(改修に対する融通性)に乏しく、非常に強引な設計のWordPressサイトだった場合は、「改修はできますが、一部はつくり直しに近い作業になってしまいます」と回答させていただくこともあります。
企業担当者様から見れば、ちょっと理解が難しいところだと思いますが、制作側の背景として知っておいていただけると、今後のWordpress運用をスムーズに進めることができるようになると思います。
WordPressサイトのメンテナンス状況も改修可否に大きく影響する
もうひとつ、改修の可否に大きく影響する要素は、WordPressサイトのメンテナンス状況です。
メンテナンス状況とは、WordPress本体と実装しているプラグインのバージョン管理のことです。
WordPressサイトをリリースしてから、本体もプラグインもこまめにアッブデートを行わずに運用してきたというケースでは、改修のタイミングで各種バージョンアップが必要になることがあり、そのことで改修の規模が大きくなることがあります。
既存の機能の改修だけでなく、その土台となるシステムの改修にまでプロジェクトが発展してしまうケースです。
ですが、これはあくまで想定より手がかかるということで、改修できる・できないでいえば「できる」になります。
ただし、ごく稀に、本当に長いこと運用してきた古いバージョンのWordPressサイトでは、本体やプラグインのアップデートのみならず、改修にあたってはサーバのPHPバージョンや契約プランの見直し、果てはサーバの移転にまで発展するケースもあります。
こうなるともう「改修」ではなく、リニューアルに近いプロジェクトですね。
WordPressサイトのアップデートについては以下の記事も参照してください。
Q:制作会社から見て改修が難しいケースとは?
では、制作会社からみて、改修が非常に難しく、できたとしてもコストがかかってしまうケースとは、どういうものなのでしょうか?
それは、可読性の低い独自のプログラムが実装されているケースなどです(それと、WordPressが、WordPress以外のCMSやアプリケーションフレームワークと連携する設計になっているサイト)。
例えば、EC機能まで有するような多機能なコーポレートサイトで、その企業様独自の商品構成にあわせたカートを実装するために、「商品カート」の機能だけは、フルスクラッチのPHPプログラムで実装されている、など──。
もちろん、上記は一例であり、こういった、ユーザ側からもアクションを受け付けるような多機能なWordPressサイトではよくあることです。
あとはやはり、機能やページ数の多い大規模サイトでしょうか。
改修の影響がどこに及ぶのか判断できない、「影響範囲」がわからないサイトは「改修のリスクが高いです」と回答せざるおえなくなります。
まとめ
過去の実例も思い浮かべながらまとめますと、既存サイトの改修にあたっては、テスト(検証)環境があるかないかもポイントになってきます。
大概、WordPressサイトのテストサイトといえば、開発時の遺跡のようなものとなり、運用に入ってからは存在意義もなくなり、投稿内容はもちろん、機能的にも本番サイトと差分ができるものですが、それでも試せる環境があるかないかは大きいです。
調査後のご報告としては、
「改修要望のうち、AとBは実施可能です。Cについてはプラグインを入れ替える大きめの改修が必要となります。Dについては元の開発会社様による独自PHPが実装されていますので弊社では予算内での改修は難しいです」
などといった回答になると思います。
すべての改修要望を実現しようとなると、サイトのフルリューアルしかないという場合も往々にしてあります。
とはいえ、実際に多機能なWordPressサイトをリニューアルするとなれば、数百万円はかかるでしょうし、おいそれとできるものではありません。
結果的にすべての改修ができなかったとしても、できるところは改修し、できない部分は潔くあきらめ(または運用で解決し)、そうして、次回のフルリニューアルの機会まで、サイトを延命して運用を続ける……となったとしても、貴社のビジネスを継続させるためのコストパフォーマンスを考えれば、大変意味のあることだと思います。
なにかしらのご事情で既存の開発会社に相談できず、それでも既存サイトの改修が必要で、相談先を探しているという方は、どうぞお気軽にご相談ください。
既存サイトの大きめな改修という点では「SEO改修」がありますね。これについては参考記事がありますのでご興味のある方は『「サイト構築」と「SEO対策」を担当する業者が違う場合の注意点とは?』をご覧ください。
また、既存のWordPressサイトを「引き継ぐ」ということでいえば、単純に更新業務を引き継ぐというケースもありますね。そういった場合の記事もありますので、どうぞ以下をご参照ください。